マルシェドーフィン

アーカイブ力

何度かパリに行きながら、時間が取れず訪問できなかった高校時代の教え子の勤めているアンティークショップに行くことにした。軽い昼食のあと相馬さんとパトリックは芝居かな?と思ったのだが、パトリックは芝居嫌いだから僕といっしょに来ると言う。いつも思うけどパートナーでもそれぞれが個人として生きているフランスは自分の行動を決めることに躊躇が無い。インターネットカフェで簡単にウエブメールをチェックしたあと、4番線に乗って終着駅のクーニャンクールに出かけた。
ここは知っている方も多いと思うが俗称泥棒市場。物騒な名前だが、昔の上野アメ横を髣髴とさせる巨大なバザールがあることで有名だ。なかでも彼女の店はマルシェ・ドーフィンにあって100年くらい前からアールデコを中心にしたアクセサリーの宝庫。荒又さんが収集していたような博物学の本や銅版画も大量に、しかも無造作に置かれている。僕にはルーブルよりポンピドーより激しく魅力的な店だった。なんでもっと早く来なかったのかと自分を呪いながら高くなってしまったユーロ換算に頭をフル回転させながら「今回は下見下見;;」と自分を抑える。
事前に携帯でコンタクトしていたので、昨日も会ったような顔をして「ボンソワールマダム・ボンソワールムッシュ」。さっそくブローチやピンズを見ていると数分で彼女はいなくなった。とにかく忙しい、膨大な在庫の内容をすべて記憶し完全に分類整理し値段はすべて彼女が交渉で決める。数人いる従業員が彼女に次々に値段付けを聞きに来るのでとても僕の応対だけをしているわけにはゆかないのだ。なかでも日本からのバイヤーが大量に買いつけに来ているのが目を引く、あちこちのセレクトショップに並んでいるアンティークはこんなところで買ってくるんだと妙に納得。彼女の話では、仕入先は極秘とのこと。倒産した工場や収集家からカートン一杯というような単位で買い付けるらしい、イラン人のスタッフを引き連れて工場で買い付けをする武勇伝をバカンスで日本に戻った彼女から聞いたことを思い出した。
美術の短大を出ていつのまにかパリに住み着き、今やこの店を取り仕切る重要人物となった彼女を見ていると、ほっそりした小柄な彼女のどこにこんなパワーが潜んでいるのかと驚嘆してしまう。僕が日本を支えて来たプロジェクトXおじさんたちの世界にいないで、アート関係の仕事をしていたせいか、周囲は実にしっかりした日本女性たちが目に付く。大阪で育って父親は婿養子(^^)。男がだらしなくて女がしっかりのアラブやラテン社会が心地よいのは、僕が育ってきた環境の影響かもしれない。

以下お店の情報
Akiyo Sakamoto
Daniel et Lili
Marche Dauphine stand 128
140, Rue des rosiers 93400 St. Ouen-France
Tel +33 1 40 10 83 46

駅を出て地上を前方の高架に向って400mほど先。高架をくぐって三叉路の真ん中を100mほど入った左手にあります。もしパリに行くなら一度立ち寄って欲しいスポット。