清潔VS不潔

借金地獄

あの小泉さんがなんだか卑しい顔になったのはいつのころだろうか?いつも凛とはっていた胸が、虚勢の鳩胸に見え始めたのはいつのころだろうか?テレビは非常に残酷なメディアだと思う。彼のふとした仕草や何気ない視線に、なんともいえない黄昏の気配が忍び寄るのを見逃がさなかった。
そして国民はあびるようにテレビ画面をながめながら、あからさまに下手な手を打ち続ける彼の悪あがきを冷静に見つめていた。不誠実を極めた宰相として、彼は歴史にその名を刻むだろう。憂国の声に貸す耳も無く、うつろな視線で続投を告げる彼はもはや抜け殻でしかないようだ。

しかし、700兆円の借金を抱えて彼が抜け殻となったあと、民主党にそれらを引き受けさせても、そこに大きな希望があるわけもない。岡田氏がいかに誠実でも、地方の荒廃ぶりを原発と高速道路の工事以外で救済する術は極めて限られたものになってしまう。林業が崩壊し、農業が競争力を失い、工場が次々と海外移転するなかで、都市部以外で大量の労働人口を支える画期的な産業を誕生させられると言うのだろうか?観光?自然保護?リゾート?それが道路工事でやっと維持している何万人もの雇用に代わる何かを創出できるのだろうか?事はまことに簡単ではない。そんなことを十分知っている庶民に対し、空念仏のように「憲法9条を守れ」と繰り返した共産党に存在理由が無くなったことも自明の理である。そして彼らもそれを知りながら「行」のように念仏を唱えるしかないという事実に、「組織」に依存する個のなんともいえないやるせなさとはかなさを感じる。

あまりに当然のことなのだが、国土全体の設計と人口維持の仕組み創りは自民党民主党に任せておくべき仕事ではない。まして天下り先にしか興味の無い官僚には言っても無駄なだけだ。彼らは「組織」や「党」に依存して自助努力を怠り、考えることをいつしか止める。

味の無くなったガムをいつまでも噛んでいる時間の余裕は誰にも無い。2000年の長きにわたって創造力と判断力を人質に出していた個人が、「この島のうえで今後も暮らしてゆける方法」を、それぞれの方法で必死に生みださねばならない時代が到来したのだ。