季節はめぐる

ねむの花

朧にかすむ満月に照らされて愛犬と散歩をすませて戻ってきました。今夜はさすがに蒸し暑い、温泉街全体がぼんやりと輝いて幻想的な光景です。我が家がある小山はわずかに開発の手を逃れた草地や雑木林があって、そんなに豪華ではない自然のわりにとても豊かに四季折々の変化を楽しむことができます。一昨日はめじろのことを書きましたが、今日ははじめてヒグラシが鳴きました。交通至便とは言いがたいこの地にながくいる理由は、温泉が塩素まみれになってしまった今となってはヒグラシが鳴くからと言ってもいいかもしれません。それほど僕は夏の夕方に聞くヒグラシの声が好きです。うだるような炎熱の日中も、もうすこし我慢すればあの声が聞けると思うとしんぼうのしがいがあるというものです。
日本の夏は確かに過酷ですが、打ち水朝顔、よしずの影の昼寝、ヒグラシの声に日は落ちて、線香花火の落ちる先をぼんやりと眺める。蚊取り線香のけむりをよけながら蚊帳をくぐって寝床に入り、団扇を持つ手に力が抜けるとやがてまどろみにつつまれて・・・。

エアコンで自由にならなかったからこそ自然と調和して見事な工夫が文化のなかで開花していったのですね・・。快適になって工夫しなくなると美意識もそれにともなって衰えてゆくのかもしれません。

いま、山はねずみもちとネムの花が満開です。うわみずざくらは藤と同じころに咲いて、その前がみつばつつじ。こぶしの花が満開になる前に土手をにぎやかにするのはタラの芽とふきのとうです。こうやって文章にしてみると、なにげない雑木林や葛のからまる草地にも愛を感じてしまいます。

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