スイスの温泉

zumthor

温泉の話題ついでに外国の温泉の話。2000年にハノーバー万博の内装に携わったあと、開幕までの時間を利用してミッテルオイローパを旅行しました。チェコプラハ、ウイーンからドナウを下ってブダペストに入るのがおすすめなのですが、このときは時間も無くハノーバーからブダペストに飛行機で入って通常のコースを逆にハノーバーへ戻るというコースでした。しょっぱなにロストバゲッジに見舞われ、結局一週間後に出発地点のハノーバーでスーツケースと再会するという喜劇を経験。日曜で下着の代えも買えないという苦難を乗り越えつつ実に思い出深い旅をすることになりました。一旦この話をはじめると文庫本一冊になってしまいかねないので今夜は温泉のことに限定(^^)。

チェコプラハからバスに揺られて3時間ほど行ったところにカルロビバリという谷あいの温泉保養地があります。ここはカール大帝が拓いたとされる温泉で、旧ソ連時代にソビエトの高官や裕福な人々がリハビリのために訪れていたとのこと。地球の歩き方などにも紹介された有名な温泉です。しかし日本の温泉と異なり、欧米のほとんどの温泉は水着を着てプールのようなところで歩行訓練したりするリハビリ専門がほとんどで、全く風情がありません。おまけに黒ひげ危機一髪の樽型おばちゃまがたくさんプカプカ浮かんでいて、どう逆立ちしても精神的には癒しとは程遠し。裸で入る日本の露天風呂に慣れてしまうと、そうまでして温泉プールに入りたくないし、トレーナーにマッサージとかされたくないと思ってしまうのです。

う〜ん。文化の違いかあ;;と思いつつ一人の建築家のことを思い出しました。ハノーバーのスイス館の設計者でヴァルスの山奥にある温泉施設の設計をして有名になった、ピーター・ズントー氏。彼が設計した荘厳でミニマルな巨大石切り場のような温泉は必見。温泉(自然)というものに対する日本人と西欧の人たちの心の距離をそのまま表現したようなたたずまいを見せています。温泉旅行もいいけど、「思考方法の差異」を体験するなら、20世紀の代表的建築を訪ねる旅がおすすめです。

LANDSCAPE OF ARCHITECTURESのなかで彼のインタビューや作品が紹介されていますので興味があれば映像を見てください。