あじさいを送る

garden

台風が近くなっているせいか凄い湿気で窓が開けられない状態です。アトリエには紙や本が大量にあるので特にこの時期の湿気には緊張します。夏はとても冷涼な気候でありがたいのでクーラーを使うことは無いのですが、梅雨時の除湿はたいへん重宝。
さてそろそろ、この日記のタイトルにあった「境界植物園」というシュールな話題に、これからきまぐれに入ってゆこうと思います。今日はまず私の植物友達のHさん(アーティスト)にあじさいを送るの巻。あじさいと言えば矢田寺(奈良)が近いので今見ごろと思いますが、僕が好きなのは山野に自生しているこあじさいやつるあじさいと言ったちいさな花をつける品種です。お向かいのUさんが日本の園芸植物を栽培するのがお好きな方で、彼のおすそわけがいつしか裏庭で繁殖、今年も美しい花をつけました。
先週プロジェクトの打ち合わせでHさんのお宅にお邪魔したときに、その無造作に見えるお庭に鋭い美意識の働いていることを感じて私は彼に尋ねたのです。
T「このあじさいはお好きですか?」
H「前に住んでいた人が植えてたんです・・・」
T「僕、野生種持ってるんですがお送りしましょうか?」
H「ぜひぜひ!絶対に送ってください」

彼の玄関先にはフンデルトワッサーのように愛にあふれる小石で組み上げたちいさな花器が置かれ、そこには不思議な野生の蘭が実におだやかで生き生きと暮らしていました。帰るときにもういちど聞きました
T「ビミョーに美しくない草抜いてますよね・・」
H「もちろんです」

人間が作為の限りを尽くして恣意的に育て上げた園芸植物と「好まれない草草」。地方都市が荒廃し、教育が荒廃し、家庭が荒廃すると、好まれない草草が繁茂し、腐海がひたひたと押し寄せます。好むと好まざるとに関わらず、庭園や園芸植物を注意深く管理することが我々が人間であるという証なのかもしれません。

☆人間が作った構造物と、植物や昆虫や微生物との境界面に暮らす隠れ賢者をお尋ねしたレポートも折に触れ掲載しようと思います。