歴史と哲学

ギリシャ神話

戦争に負けたあと奇跡の復興を果たした日本の宰相中曽根氏は、イタリアを訪問の折、日本の発展とイタリアの表面上の停滞を取り上げ、高慢不遜に彼らを馬鹿にするような発言をして問題化したことがあった。悲しいことに僕がベニスで展示を行うと決まったあとも、友人や関係者からは異口同音に「彼らは働かない」「彼らは粗雑だ」などというご指導をいただいた。とにかくラテンの国は働かず、ドイツや北欧は勤勉などというステロタイプの言説を得意げに語る知識人のなんと多かったことか。大使館で食事会があるたびに「日本と同じと思ってもらっちゃ〜困りますよ(嘲笑)」という発言を耳にたこが出来るくらい聞かされた。その話を空耳のように聞きながら、5時になったらさっさと家族の待つ家庭に帰る頼もしいスタッフのドッシリとした瞳に比べ、一時の成功に酔いしれて奢り高ぶり拡散する官僚たちの瞳孔がぞっとするくらい浅ましかったことを思い出す。
同じ嫌な思いが、アテネオリンピックの準備段階の報道に散見しはじめたのがここ一ヶ月。道路も舗装されていないとか、間に合うのでしょうかね〜(笑)。というニュースキャスター達の高慢な発言や、愛ちゃんにまで「選手村のドアノブが取れました」などと言わせて低レベルで国民の笑いを喚起する手法が平然と行われた。美浜の原発事故、ゼネコンの神話が崩壊した阪神大震災の高架横転事故などを棚に上げ 彼らの苦闘や成功を応援する気持ちより、相手の弱みをあげつらって笑うしかない浅ましい日本人の姿に愕然とする他はなかった。国民すべてが中途半端な金を手にし、官僚と同じ発想になり、ただ貧しいというだけで隣国を笑うのだ。
実に爽快なり!今はやや貧しくとも、2000年の間他国に蹂躙を許しても、歴史を認識し、哲学を生み出した民族の誇りを忘れずに見事な空間を構築したギリシャ。サッカーのヨーロッパカップを制したこととともに21世紀に彼らがEUの堂々たる一員になったことを告げた。

心からギリシャの成功に拍手を送りたい!そしてニュープリマスでお世話になったギリシャ移民のカフェのマスターにも「おめでとう!」と言おう。彼とテニスをしてすっかり負けてしまったけど、あのガッチリと交わした握手にこそ未来があるのだ。